環八の外側の魅力的な住宅街(田園調布 vs 成城 、吉祥寺&二子玉川ライズ)
東京の郊外の高級住宅街の多くは環状八号線の外側に位置し、豊かな河川に恵まれ高台に位置しています。高級住宅街といえば、田園調布と成城でしょう。共に環八の外側で、田園調布は多摩川沿いの高台に、成城は仙川と野川に挟まれた高台にあります。そして、環八の外側には、人気の吉祥寺と高層マンション群「RISE」を擁する二子玉川があります。これらの住宅街は沿線はバラバラですが、環状線の視点で見ると環八外側に並んでいます。
従来からの高級住宅街は、山手通の内側の都心部(渋谷区松濤、目黒区青葉台、港区白金台、港区元麻布、品川区池田山 等)と環八外側のこれらの住宅街に分かれます。環八外側の高級住宅街は高台から水辺を見渡せる風光明媚な場所にあり自然的にも安全性が高く、土地区画は大きく整っており、住環境に恵まれています。弱点はやや利便性に劣る場合があることでしょうか。
田園調布 vs 成城
田園調布と成城は東京の高級住宅街の両横綱ですが、客観的な指標を比較してみましょう。
田園調布 | 成城 | |
都心主要駅からの直線距離 | 約7.5km(渋谷) | 約10.7km(新宿) |
面積 | 約2050k㎡ | 約2260k㎡ |
人口(平成30年) | 約19,000人 | 約23,000人 |
公示価格(住宅地)(令和2年) | 1,090,000円/㎡(3丁目) | 867,000円/㎡(6丁目) |
近接する商業地域 | 自由が丘 | なし(二子玉川?) |
標高(駅) | 30m | 44m |
河川 | 多摩川 | 仙川・野川 |
自然的特徴 | 傾斜が激しい | なだらかな地形 |
- 公示価格についてですが、成城6丁目、駅から550mに対して、田園調布は3丁目、駅距離は280mです。田園調布の公示地はかなり良い場所ですが、成城の公示地は非常に良い場所とは言えません。私は成城4丁目、5丁目近辺の駅に比較的近いところが最も高いのではないかと思いますのでこの辺は斟酌してください。
- 令和2年の公示価格(住宅地)の最高価格は赤坂にあり、4,720,000円/㎡です。一見、こちらの方がすごそうですが、容積率をみると、田園調布のすごさがわかります。赤坂の容積率(延床面積/敷地面積)は400%あり100%の価格は1,180,000円/㎡です。これに対し田園調布の容積率は80%に過ぎませんので、容積率100%当たりの価格は1,360,000円/㎡と赤坂より15%以上高い価格となります。公示価格は必ず容積率も見ながら高低を判断しないと実質価値を踏み誤ります。私もすべての容積率100%当たりの単価を調べてはいませんが、田園調布が東京でもトップもしくはそれに近い高額な土地であることは間違いありません。やっぱり凄い、田園調布!成城!
- 両者を比較して田園調布が優る点は、隣の駅が自由が丘であるという点です。田園調布の徒歩圏に大きな商業施設はありませんが、東横線1駅で屈指の商業都市「自由が丘」があります。これに対して成城には商業都市が隣接していません。いくつかのスーパーや商業施設はありますが、ちょっと寂しいです。
- 成城が優る点は、起伏の穏やかな高台にある点でしょう。確かに野川に向かっては急な下りとなりますし、仙川に向かっても若干の傾斜があります。しかし自転車で走っても大して気にはなりません。これに対して田園調布は傾斜が激しい場所が多くあります。多摩川に向かって急激な下りとなりますが、その傾斜地に田園調布はあります。自転車ではもちろん息切れしますし、歩いても大変です。
- 住宅地の評価の基本は「居住の快適性」と「利便性」にあります。この2つの要素が整っているのが良い住宅街です。そしてファミリー層にとっては子供を育てるという観点を含めて日当たりや眺望、街並み、土地の安全性、学校等、「居住の快適性」が重視されます。これに対して単身者世帯には通勤・買い物等の利便性が重視されます。
- 近年、単身者世帯の増加に伴い、利便性を重視される傾向の中で高級住宅街がやや危ぶまれる論調が多くなっている感じを受けます。田園調布も成城も便利かといわれると困ります。しかし「居住の快適性」という意味でいえば、間違いなく東京でも屈指の地域でしょう。個人の邸宅の写真を載せるわけにもいきませんが、画地が広く立派な佇まいの豪邸はほかの地域ではあまり見ることのできないものです。時代の変化の中で田園調布、成城とも商業施設との関連を重視し、今後とも東京を代表する高級住宅街として発展していってほしいと思います。
人気の吉祥寺
- 東京で最も人気のある街「吉祥寺」(武蔵野市)も環八の外側にあります。そして東京の一級河川の一つ、「神田川」の源となるのが井の頭公園(武蔵野市と三鷹市に跨る)です。さらに井の頭の公園の南側を玉川上水が三鷹駅から下ってきます。吉祥寺も環八外側の河川に沿った大地にある街です。
- 吉祥寺は商業都市として人気がありますが、その周辺の住宅地も魅力的です。御殿山(武蔵野市、井の頭公園の西側)は玉川上水沿いの美しい街並みの住宅街で、三鷹市三鷹台(井の頭公園の東側)は上の写真のように田園調布や成城にも負けない街並みとなっています。吉祥寺は広範囲にわたる武蔵野台地の住宅地域に住む人々が集まり、賑わっている街です。
高層マンション群、二子玉川ライズ
- 二子玉川は多摩川沿いにある玉川高島屋を中心とした郊外の街でした。(昔から人気はありましたが。)しかし東急グループが高層マンション、高層オフィスビル及び商業施設を建設し大規模高層マンション群が形成されました。特に住居棟と商業施設の融合は素晴らしく、三井不動産が川崎に開発したラゾーナを上回るものです。
- 近年、都心回帰の流れの中で、中央区、港区を中心として開発が続いてきました。確かに利便性において東京都心部ほど高い地域はありませんが、「住環境」という意味では十分に満たされるものを私は感じませんでした。
- この二子玉川ライズは、多摩川に接する日照や通風もよく、環八外側特有の画地の広さや緑の多い郊外としての魅力があります。さらに商業施設とも融合し利便性も高いので、環八の外側により魅力的な街ができました。
- 私は、高層マンションを支持しませんし、低い土地(特に川沿い)はリスクの高さから敬遠するタイプですが、二子玉川ライズに関しては魅力を感じて困っています。(高層マンションについては、いつか投稿したいと思います。)
環八の外側の魅力とは?
- ここでは、環八の外側の住宅地として、「田園調布」「成城」「吉祥寺」「二子玉川」を取り上げましたが、他にも多くの素晴らしい住宅地はあります。京王線沿いには「千歳烏山」「仙川」「つつじヶ丘」があります。「つつじヶ丘」が古くからの住宅街としては有名ですが、近年はkewpieのおしゃれな本社のある「仙川」の魅力も増し「千歳烏山」の繁華性の高さ見魅力です。また西武新宿線沿いでは、「東伏見」「武蔵関」の周辺には公園も多く、居住性の良さも感じます。(西武池袋線、東武東上線には行けていません。)
- 環八の外側がなぜ、住宅街に恵まれているのかを考えた時、「容積率の低さ」と「画地(土地面積)の広さ」を感じます。要は都心から少し離れることで、土地を広くゆったりと使っているということです。このような特性に加え、河川があり高台にある地域は「居住の快適性」の高い住宅地域として発達してきたといえるでしょう。
- 人口減少化の中で、容積率の高い都心部に容積率を十分に活用した建物を建てる等の投資に拍車がかかっているのが現在の不動産の状況でしょう。相続対策は?と言われれば、お金さえあれば、都心部に土地を買ってそこにできるだけ大きく、容積率の高い建物を建てましょう!というのがロジック上は簡単です。しかし不動産は個別性が高いものですし、地域の繁栄も都心部にあれば必ず栄えるものではありません。私は環八の外側のこれら地域の魅力にもう一度目を向け、投資対象として考えるべきだと思います。