東京周辺の鉄道(4)つくばエクスプレス


「つくばエクスプレス」は乗降者数の規模や伸び率から、現在、最も着目すべき路線だと思います。「秋葉原」から「北千住」「南流山」「流山おおたかの森」「守谷」を経由し「つくば」に至る20駅、58.3kmの路線です。そして「つくばエクスプレス」の正式名称は「常磐新線」といいます。

2005年に開業し首都圏新都市鉄道株式会社が運営しています。当初、JR東日本が運営を予定していましたが辞退したため運営することとなりました。首都圏新都市鉄道株式会社は東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、千代田、 台東区、荒川区、足立区、八潮市、三郷市、流山市、柏市、守谷市、つくばみらい市、つくば市と民間企業等が出資する第三セクターです。

つくばエクスプレスの走る地域

「つくばエクスプレス」は正式名称の「常磐新線」です。「常磐」とは「常陸(ひたち)=茨城」と「磐城(いわき)=福島」の方面を意味します。常磐線は茨城にも福島にもゆきますが、つくばエクスプレスは茨城までしか行きません。

私はつくばエクスプレスの走る地域を表現するのに最も適した地名は「広義の葛飾」と考えます。現在、葛飾といえば東京都特別区である葛飾区を指します。しかし葛飾は古くは東京東部、埼玉南部、千葉北部、茨城南部の現在の利根川~荒川近辺の地域を指していました。この地域は江戸時代に鬼怒川と、当時東京湾に注いていた利根川を銚子へ流し、「香取の海」といわれていた銚子付近の大きな内海を肥沃な穀倉地帯とした辺りとなります。現在も葛飾区という名称以外にも江戸川区の「葛西(葛飾西部)」や千葉県の「東葛飾地域(柏市、我孫子市、松戸市、流山市、鎌ヶ谷市、野田市)」という呼称があります。

そして東京から千葉へ向かう路線は、東葛飾地域へ向かう「常磐線」「つくばエクスプレス」と千葉市方面は向かう「総武本線」「京葉線」に分けられ、津田沼から佐倉・成田へ向かう「京成本線」は後者に含まれると考えるべきでしょう。東葛飾地域は東京への志向が強い地域です。特に千葉県では千葉市を中心とした千葉志向の地域と感覚的な差があるといわれています。

つくばエクスプレスの駅

最初に2013年から2018年までの各駅における乗降者数を見てみましょう。

所在 2013年乗降者数 2018年乗降者数 伸び率
TX01 秋葉原 東京都千代田区 124,300 137,400 110.5%
TX02 新御徒町 東京都台東区 33600 44600 132.7%
TX03 浅草 東京都台東区 18700 22700 121.4%
TX04 南千住 東京都荒川区 9300 12100 130.1%
TX05 北千住 東京都足立区 83500 103200 123.6%
TX06 青井 東京都足立区 12300 13200 107.3%
TX07 六町 東京都足立区 24800 29500 119.0%
TX08  八潮 埼玉県八潮市 35200 47400 134.7%
TX09 三郷中央 埼玉県三郷市 22800 29900 131.1%
TX10 南流山 千葉県流山市 63900 74100 116.0%
TX11 流山セントラルパーク 千葉県流山市 6600 10300 156.1%
TX12 流山おおたかの森 千葉県流山市 63700 76200 119.6%
TX13 柏の葉キャンパス 千葉県柏市 27900 34400 123.3%
TX14 柏たなか 千葉県柏市 6800 11700 172.1%
TX15 守谷 茨城県守谷市 48700 49700 102.1%
TX16 みらい平 茨城県つくばみらい市 8000 10200 127.5%
TX17 みどりの 茨城県つくば市 6400 9000 140.6%
TX18 万博記念公園 茨城県つくば市 4800 6000 125.0%
TX19 研究学園 茨城県つくば市 11900 14600 122.7%
TX20 つくば 茨城県つくば市 34800 36400 104.6%

このようにつくばエクスプレスの各駅での乗降者数の伸び率は非常に高い状態にあります。

「つくばエクスプレス」開業の背景には①常磐線の混雑率の高さと②住宅供給がありました。常磐線は1986年には松戸ー北千住間で271%となり日本で最も混雑していました。また東京から放射状に広がる路線のうち常磐線と東武伊勢崎線の間は大きく、1973年に設立された「筑波大学」を中心とした筑波研究学園都市へのアクセスも必要でした。そこで関係する自治体の意見を集約し、現在のつくばエクスプレスの路線を策定、常磐線の混雑を緩和すると同時につくばエクスプレス近辺の住宅市場を開発してゆきました。

開業当初から運営は順調で、初年度の乗客数(1日)は150,700人で当初計画の135,000人を超えていました。すべての自治体に良好な影響を与えていますが、ここでは通勤利用が主目的となり利用者数が多く伸び率も大きい八潮、三郷中央、南流山、流山おおたかの森と、終着駅のつくばにフォーカスをしてみたいと思います。

八潮

埼玉県八潮市は埼玉県南東部に位置し、東京都足立区、葛飾区と隣接しているにもかかわらず、つくばエクスプレス開業前は鉄道の駅がない自治体でした。従来は低湿地帯で農業の盛んな地域でしたが都市化は進んではいませんでした。しかしつくばエクスプレスの開業により、駅の周辺には「フレスポ八潮」という商業施設ができ、高層マンション化も進んでいます。これにより開業当初(2005年)、約75000人程度の人口は90000人近くまで増加し、東京のベッドタウン化が進んでいます。

三郷中央

三郷中央駅と周辺

 

三郷中央は三郷市の南部にあります。三郷市には武蔵野線の三郷市の東部に三郷駅及び北部に新三郷駅があります。三郷市は中川と江戸川にはさまれた低湿地帯にあり農業の盛んな地域ですが、つくばエクスプレスにより東京のベッドタウン化が加速しています。商業施設はマルエツ三郷中央店や、島忠なども進出し駅の近くには高層マンションも多くあります。新しく勢いのある地域となっています。

南流山

南流山はJR武蔵野線との乗換駅となります。駅の近辺は昔からの南流山駅の雰囲気を踏襲し、八潮や三郷中央のような新しく開発されたようなものではありません。しかし「南流山」と、東武伊勢崎線と武蔵野線の交差駅の「南越谷」の間にある武蔵野線の駅(新三郷、吉川美南、越谷レイクタウン等)には、つくばエクスプレス開業後、商業施設や住宅の建設が相次いでいます。新三郷では「ららぽーと新三郷」「IKEA」「コストコ」が、吉川美南には「イオンタウン吉川」が、越谷レイクタウンには「イオンレイクタウン」が完成しています。(イオンレイクタウンはイオンモール幕張新都心に次ぐ規模を有します。)これに連動して高層マンションや戸建て住宅街も多く建設されています。このような開発は、つくばエクスプレスの開業に伴うものと考えても良いと思われます。

流山おおたかの森

流山おおたかの森S・C

流山おおたかの森のマンション

流山おおたかの森は、つくばエクスプレスの開業に伴い最も発展した都市と思われます。東武野田線(船橋~柏~春日部~大宮)と交差する駅でもあります。駅前にはつくばエクスプレス沿線で最大規模の商業施設「流山おおたかの森S・C(ショッピングセンター)(高島屋系列)」があります。2007年の開業で延べ床面積約10万㎡、店舗数130で映画館まで備えた商業施設は大きな魅力です。またこの街は標高18m前後あり水害リスクも低いと思われます。現在でも次々と高層マンションが建てられ街の全体像も固まっているとは言えないほどですが、今後の発展が非常に楽しみな街です。

さらに流山おおたかの森の発展は東武野田線沿線にも波及する可能性があります。東武野田線は武蔵野線と比較して都心部からやや離れた首都環状線と考えられますが、南部においては船橋・新鎌ヶ谷(北総線・新京成線と交差)・柏、北部では春日部(東武伊勢崎線と交差)・大宮(埼玉の交通の要衝)と重要な都市を結んでいます。東武電鉄は「愛宕(野田市)」近辺で高架化をすすめ、「清水公園(野田市)」では東武の戸建住宅分譲「ソライエ」が開発されています。この辺りの開発は、どの程度発展するのか不明ですが、東武鉄道が力を入れている様子がうかがえます。

つくば

つくば駅周辺

筑波大学 入り口付近

国の教育・研究機関が集中する地域です。筑波大学、JAXA、国土地理院、防災科学技術研究所等29の研究機関があります。昭和38年、東京の過密解消及び科学技術の振興と高等教育の充実を目的に、国家プロジェクトとして推進されました。私もつくば駅からバスで筑波大学に立ち寄りました。JAXAや国土地理院も立ち寄りたかったのですが、バス便で複数の機関の訪問はとてもできませんでした。交通の便は非常に悪く、広大すぎる土地に研究機関が散在する感じです。この地に何故、日本の研究機関を集中させたのか、私には理解できません。東京から離れたこの地なら戦争や災害にも巻き込まれないとか、人の密度が低いからスパイも進入困難とか、そのような理由なのでしょうか?

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