東京周辺の鉄道(6)武蔵野線と南武線

環状線としてのJR武蔵野線とJR南武線

JR武蔵野線とJR南武線は「府中本町」で乗り換えできますが、二つの路線を府中本町で繋ぐと山手線の外側にある環状線と見ることができます。そして東京周辺の鉄道(3)でみたように、「武蔵野線+南武線」とその内側では乗降者数は増加傾向にありますが、外側は減少傾向にあります。もちろん外側であっても横浜や浦和・大宮、千葉、立川など大都市の付近の乗降者数は増えていますし、観光地でもある鎌倉・江の島、川越等は増加傾向にあります。しかし東京の影響力の及ぶ範囲として「武蔵野線+南武線」は一つの参考となるのではないでしょうか。

武蔵野線+南武線の特徴として、山手線から放射状に広がる路線と非常に多く交差することが挙げられます。武蔵野線では26駅のうち13駅で接続し、南武線(川崎ー府中本町)では20駅のうち5駅で交差します。なお、JR東日本も2008年から「京葉線+武蔵野線+南武線+横浜線」を接続駅を多く持つ「東京メガループ」と呼びサービス向上に努める対象となっています。

なお、武蔵野線は東京駅を始発とすることも多いのですが、東京ー市川塩浜間は京葉線に含まれるので、西船橋ー府中本町間を対象とします。

JR武蔵野線の成り立ち

JR武蔵野線の駅にいると、多くの貨物列車が運行していることが判ります。武蔵野線は当初、山手線の貨物の代替として「東京外環貨物線」として計画され、1973年に開業したものです。当初から旅客線と貨物船が混在していました。そして武蔵野線は府中本町ー鶴見(横浜)を結ぶ「武蔵野南線」という貨物専用路線があります。この路線はほとんどが地下を走り、旅客線は通っていませんが、臨時列車が走ることもあるそうです。貨物船まで合わせると全線約100kmの路線となります。

武蔵野線は「つくばエクスプレス」が開業して以来、南流山から東武伊勢崎線と交差する南越谷にかけて大きな発展をしています。(南流山ー三郷ー新三郷ー吉川美南ー吉川ー越谷レイクタウンー南越谷)この地域は江戸川・中川等が流れる利根川水系の低湿地帯で従来、田園地帯だったところです。この一帯に残る広い土地に、「新三郷」ではららぽーと新三郷・IKEA新三郷がオープン、「越谷レイクタウン」ではイオンレイクタウンがオープンし周辺には低層住宅や高層マンションが増加しています。

JR南武線の成り立ち

南武線は「南武鉄道」という鉄道会社が開業した路線です。1927年川崎ー登戸間、1929年に全線開通となり、川崎ー立川間で35.5kmとなります。南武線は現在も「向河原」にNEC、「武蔵中原」に富士通の事業所がありますが、更に以前は「川崎」に東芝の工場が存在していました(現在のラゾーナ川崎)。その他にも日本光学等、この一帯は軍需産業が集約する工業地帯で、南武線は多摩地区の農村から労働者が通勤する路線として賑わった路線です。しかし南武線は中央線と東海道線を結び周辺には多くの軍需工場が存在していたことから重要路線とみなされ、1944年に戦時買収私鉄指定で国有化されました。(現在はJR東日本の路線。)

南武線は多摩地区(南多摩ー登戸)あたりは梨園等の農業が中心となり、東急田園都市線と交差する「武蔵溝ノ口」から「川崎」あたりは工業中心の街です。現在は農地や工場の広い土地を生かし、農地には主として低層住宅街が、工場跡地には高層マンションが建てられ、住宅化が進んでいます。

武蔵野線と南武線の駅

最初に2013年から2018年までの各駅における乗降者数を見てみましょう。

武蔵野線 駅 所在 2013年乗降者数 2018年乗降者数 伸び率
JM10 西船橋 千葉県船橋市
JM11 船橋法典 千葉県船橋市 34734 38318 110.3%
JM12 市川大野 千葉県市川市 22506 23962 106.5%
JM13 東松戶 千葉県松戸市 33374 41470 124.3%
JM14 新八柱 千葉県松戸市 47230 49906 105.7%
JM15 新松戶 千葉県松戸市
JM16 南流山 千葉県流山市 58026 69908 120.5%
JM17  三郷 埼玉県三郷市 29250 29242 100.0%
JM18 新三郷 埼玉県三郷市 32586 32160 98.7%
JM19 吉川美南 埼玉県吉川市 3428 10378 302.7%
JM20 吉川 埼玉県吉川市 36344 36346 100.0%
JM21 越谷レイクタウン 埼玉県越谷市 36492 56844 155.8%
JM22 南越谷 埼玉県越谷市 137312 151524 110.4%
JM23 東川口 埼玉県川口市 62064 73246 118.0%
JM24 東浦和 埼玉県さいたま市緑区 54366 58078 106.8%
JM25 南浦和 埼玉県さいたま市南区 114998 120778 105.0%
JM26 武蔵浦和 埼玉県さいたま市南区 94472 107926 114.2%
JM27 西浦和 埼玉県さいたま市桜区 26758 29910 111.8%
JM28 北朝霞 埼玉県朝霞市 130356 141768 108.8%
JM29 新座 埼玉県新座市 37478 42008 112.1%
JM30 東所沢 埼玉県所沢市 29502 31064 105.3%
JM31 新秋津 東京都東村山市 74806 77820 104.0%
JM32 新小平 東京都小平市 22382 22978 102.7%
JM33 西国分寺 東京都国分寺市
JM34 北府中 東京都府中市 27392 30552 111.5%
JM35 府中本町 東京都府中市 33844 34978 103.4%
南武線 駅 所在 2013年乗降者数 2018年乗降者数 伸び率
JN 01 川崎 神奈川県川崎市川崎区
JN02  尻手 神奈川県川崎市幸区 24174 29774 123.2%
JN03 矢向 神奈川県横浜市鶴見区 34044 37972 111.5%
JN04 鹿嶋田 神奈川県川崎市幸区 33574 38322 114.1%
JN05 平間 神奈川県川崎市中原区 28280 29558 104.5%
JN06 向河原 神奈川県川崎市中原区 28950 25626 88.5%
JN07 武蔵小杉 神奈川県川崎市中原区 216092 261504 121.0%
JN08 武蔵中原 神奈川県川崎市中原区 67570 70120 103.8%
JN09 武蔵新城 神奈川県川崎市中原区 65878 74664 113.3%
JN10 武蔵溝ノ口 神奈川県川崎市高津区 159066 172692 108.6%
JN11 津田山 神奈川県川崎市高津区 7254 7642 105.3%
JN12 久地 神奈川県川崎市高津区 26704 28648 107.3%
JN13 宿川原 神奈川県川崎市多摩区 14640 16446 112.3%
JN14 登戸 神奈川県川崎市多摩区 156150 165430 105.9%
JN15 中野島 神奈川県川崎市多摩区 28752 29994 104.3%
JN16 稲田堤 神奈川県川崎市多摩区 47750 52840 110.7%
JN17 矢野口 東京都稲城市 18854 20570 109.1%
JN18 稲城長沼 東京都稲城市 13304 16180 121.6%
JN19 南多摩 東京都稲城市 13132 13568 103.3%
JN20 府中本町 東京都府中市 (33844) (34978) (103.4%)

(分倍河原~立川間及び尻手からの南武支線は省略、府中本町は共に武蔵野線と南武線の合算)

JR武蔵野線の駅

新三郷 vs 越谷レイクタウン

新三郷・ららぽーと

越谷レイクタウン

「新三郷」駅のあるの町名は「三郷市新三郷ららシティ」です。そしてららぽーと新三郷、コストコ新三郷倉庫店、IKEA新三郷など、大型商業施設が集まっています。ららぽーと新三郷は2009年開業、敷地面積約8万5200m²、延床面積約14万2500m²、店舗面積4万6822m²、店舗数178店です。IKEA新三郷は2008年開業、敷地面積約57,100㎡、延床面積88,100㎡です。コストコ新三郷倉庫店は2009年開業、敷地面積約3万㎡です。

これに対して、越谷レイクタウンはイオンレイクタウンというイオンモールの運営する商業施設で、イオンレイクタウンkaze、イオンレイクタウンmori、LakeTownOUTLETの3つのモールで成り立っています。敷地面積337,357 ㎡、延床面積393,916㎡、店舗面積245,223㎡、店舗数710店となっています。

乗降者数から見ると、越谷レイクタウンの人気の高さがうかがえます。しかし店舗数が710店もあり、競合する業種も多く仕入れを行い販売する形態の店舗で経営を十分維持できるのかやや疑問を感じます。メーカー直営方式が必要なのではないでしょうか?また店舗数が減少を始めれば空き店舗を埋めることは並大抵の努力では実現できないでしょう。さらに周囲の住宅開発は新三郷に比べ遅れをとっています。

新三郷は三井不動産の経営に基づきますが、住宅から商業施設まで深いノウハウを有する三井不動産の開発だけあって商業施設の周囲には高層マンションや低層住宅が広く開発され住宅群の中に大規模商業施設が存在する状態になっています。町全体が融和している感があり、長期的に安定的な街の発展を私は感じています。

超大規模商業施設でガンガン攻めるレイクタウンVS住宅+商業施設で街の発展を目指す新三郷、目が離せません。

東浦和・南浦和・武蔵浦和・西浦和

武蔵野線には浦和を名乗る駅が4つありますが、さいたま市浦和区にある駅は1つもありません。東浦和は「緑区東浦和」、南浦和は「南区南浦和」にあるので浦和といえば浦和です。しかし武蔵浦和は「南区別所」、西浦和は「桜区田島」です。なぜこんなことになったのか?ーさいたま市に統合される以前の「浦和市」は現在の「浦和区+桜区+南区+緑区」でした。

因みに「さいたま市=(旧)浦和市+大宮市+与野市+岩槻市」となっています。大宮についても「(旧)大宮市=大宮区+西区+北区+見沼区」です。複雑ですね。

JR南武線の駅

尻手・矢向・鹿嶋田

矢向駅近辺

私は横浜市鶴見区で育ちましたが、夏になると光化学スモッグ注意報が鳴り響き体育の授業ができない日がありました(年齢がバレますが)。この3駅辺りは最も光化学スモッグの被害が強い地域だったのではないかと今でも思ってしまいます。しかし現在は、光化学スモッグなどありません。この3駅の中で尻手の伸び率が特に高くなっています。川崎に隣接する尻手の傍には高層マンション等も増加傾向にあります。さらに、尻手からは南武支線が出ていて、浜川崎へと向かいます。実際に乗ってみると林があったり低層住宅が並んだりもしていますが、尻手に隣接する「八丁畷(はちょうなわて)」周辺には超高層を含め高層マンションが建ち並ぶ地域となっています。この充実が尻手の乗降者数に影響している可能性もあると思います。

南武支線は本数も少なく、「浜川崎」ではマイナー路線である「鶴見線」に改札外で乗り換えることができます。いかにも鉄道マニアに受けそうな路線です。

武蔵新城・武蔵中原・向河原

武蔵中原・富士通

「武蔵新城」は乗換駅を除くと南武線で最も発達した地域です。スーパーや飲食を中心に駅の付近は多数の店舗や高層マンションが集積し、低層住宅なども建っています。南武線周辺には不整形地が多く街としての一体感が薄いイメージがありますが、武蔵新城は特にその傾向を強く感じます。土地は不整形が多く土地が空いていれば、店舗であろうとマンションであろうと戸建住宅であろうとバンバン建築を進めている感があります。街並みは美しいとは言えません。用途地域についても駅の傍は商業地域・近隣商業地域ですが少し離れると第一種住居地域、準住居地域、準工業地域など様々です。

「武蔵中原」は富士通の城下町、「向河原」はNECの城下町となっています。武蔵中原の雰囲気は「武蔵新城」に類似し、向河原の近辺には「武蔵小杉」の超高層マンションの勢いが迫ります。しかし向河原の乗降者数が大きく減少(88.5%)しています。南武線全駅のうち、減少しているのはこの駅だけです。これは駅周辺の地域としての勢いがないというよりNECの勢いがないことを反映していると考えます。向河原の駅の隣にはNECの非常に大きな工場や超高層事務所ビルがありますが、NECでは2018年頃までリストラを繰り返し実施してきましたので、その影響により向河原の乗降者数が減少したものと考えます。

矢野口・稲城長沼

稲城長沼近辺の住宅街

矢野口~稲城長沼間は梨農園が多く、これらの農地が戸建分譲され戸建住宅が増えています。また稲城長沼の駅南側には高層マンションも建っています。稲城長沼駅は2013年に高架となり、ラッシュ時にはこの駅を始発とする列車が多く運行されています。快速停車駅でもあることから、駅周辺の住宅化が進行し乗降者数も順調に増加しているものと思われます。この地域は第一種低層住居専用地域が中心となっています。

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