ドローンで屋根を調べてみた。(番外編)
今回は番外編です。
私は不動産鑑定士実務修習過程の終了考査(最終試験)の翌日にドローンを買いにゆきました。それ以来、ほぼ毎日、室内でドローンを飛ばし続けてきましたが、新たな機体を購入し自宅の屋根の撮影を行いました!ここでは、①ドローンを飛ばす目的⓶法的な注意事項③市販されているドローンとその構造、ドローンの習得方法について述べたいと思います。
ドローンを飛ばす目的
ドローンを何故飛ばすのか?・・・不動産鑑定士の仕事は不動産の経済価値の判定ですが、不動産は概ね「土地」と「建物」から成り立っています。そして「土地」と「建物」を調査するうえでドローンは大変有用なツールだと考えます。私のドローンの目的は不動産の調査上の独自性です。
昨年、9月の台風で当社の賃貸アパートの屋根の一部に損害が発生しました。しかし2階建ての建物でも7-8mの高さがあるので、どこがどの程度損害を受けているのかわかりませんでした。その時は幸い、隣地に高台の学校があり、その土地から屋根の確認をすることができましたが、一般的には足場を組まないと屋根の調査はできません。そして足場を組む立見には10万円以上の予算が必要なケースが多いと思います。
不動産の鑑定評価において、建物の賃貸されている部分と高所は確認の難しい部分です。高所は屋根以外にも外壁の浮きを確認することもできませんし、その他充分観察ができないので、高所の瑕疵を発見するのは困難です。最近のドローンには赤外線機能も搭載されていますので、ドローン一つで建物調査の範囲がかなり広がります。
また、「土地」の調査についても有用です。不動産鑑定士の範囲外ですが、土地の「測量」はドローンで行うことができます。現在、建築現場で測量機器(セオドライドやトータルステーション)で測量を行っているシーンを目にしますが、ドローンで空撮すれば作業は大幅に短縮可能です。また測量まで行わなくても「公図」との照合で登記の制度がある程度わかります。古くからの土地は地積測量図もなく、公図の示す形状から地積(土地の面積)まで実寸と異なることがしばしばあります。ドローンを使えば大幅に異なっているかどうかはわかると思われます。今後、不動産についてはドローンは必須に近い道具となるのではないでしょうか。
リスクと法的な注意事項
さて、ドローンについてはリスクがあります。リスクがあるので法的な制約も多くあります。
ドローンのリスクは主に次の2つでないでしょうか?
①墜落等の事故
⓶テロへの利用
①については、墜落して人へ傷害を負わせること、物への損害を与えること、さらには航空機等と衝突して航空機が墜落するリスク等です。
⓶については、昨年、サウジアラビアの石油施設にドローンでの攻撃が行われ、世界の石油市場が大混乱しました。ドローンで攻撃すれば、攻撃側の人的リスクは低いですし、お金はかからないですし、レーダー網にはかかりにくいですし、テロリストには魅力満載のツールです。遠隔プログラムもPyhon等の言語でGPS位置情報による飛行と起爆について比較的簡単に組めそうです。
これらの関係で、法律は次のような規制に注意が必要です。
①航空法・・・航空法では200g(機体+バッテリー)以上に該当するドローンが制約を受け、a.人口密集地域(上記の地図の赤い部分)、b.150m以上の上空、空港周辺(上記の地図の緑部分)では原則飛行できません。この場合はドローン情報基盤システム(DIPS)でオンライン申請が可能ですが、次のような飛行を行う場合には、国土交通省の航空局標準マニュアルでは対応できませんので専門の行政書士と相談した方が良いでしょう。(私も行政書士ですが。)
○人口集中地区上空の飛行
○夜間飛行
○目視外飛行
○人又は物件から30m以上の距離を確保できない飛行
○危険物輸送又は物件投下を行う飛行
⓶小型無人機飛行等禁止法・・・国の重要な施設等、外国公館等、防衛関係施設及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行を禁止しています。
③道路交通法・・・道路上でドローンの発着等や飛行を行う場合には警察に道路使用許可を得なければなりません。
④条例・・・東京都の場合、全ての都立公園等でドローンの飛行は禁止されています。
⑤河川・河川敷等・・・河川管理者(一級河川の場合、国土交通省や東京都等)の許可が必要です。
⑥私有地・・・所有者の許可が必要です。
その他、電波法にも注意が必要です。世界シェア70%のDJIをはじめ、民生用のドローンは2.4Ghz帯を使用しているため問題はありませんが、産業用またFPV飛行(ゴーグルをしてドローンレースを行う)の場合、無線資格を取得し無線局を開設する必要があります。
都心でドローンを簡単に飛ばすには、200g未満のドローンを室内で飛ばすか、自宅の敷地内で飛ばすくらいしか、一般にはできません。
市販されているドローンとその構造、ドローンの習得方法
市販されているドローンはDJIという中国メーカーの製品が7割を占めます。とりあえずDJIの製品を使いましょう。中国の製品に抵抗のある方は、フランスのパロットなどがあります。DJIの製品としては、小さい方からMavicMini、Mavic2、Phantom4、Inspire等があります。Mavic Miniは機体+バッテリーが200g未満なので、航空法の対象から外れます。このほか、子会社のRyze Tech社のTelloもラインアップと考えてよいでしょう。
私はこれまでに、「Tello」⇒「Mavic Mini」の順で購入しています。それでは、機体を見てみましょう。
「Tello」はトイ・ドローンといわれます。室内専用と考えてよい機体です。本体単独(+バッテリー1)で売っていますが、必ずコントローラー、バッテリー予備2、充電器をそろえた方が良いです。あと、すぐ落ちてプロペラガードが壊れたり、プロペラがなくなったりしますので、これらの予備も買っておきましょう。整理のためにはバックが、FPV飛行を楽しみたい場合はゴーグルが必要になります。フルでそろえても25,000円程度です。
この機体はカメラが付いていますが、後で説明するジンバルはありません。あと、コントローラーにはスマホをつけて使います。スマホにはアプリをインストールして利用しますので、スマホなくして飛ばすことはできません。
Telloは「おもちゃ」です。室内で飛ばしていてもWifiが切れたり、上下動しやすいため、特に不慣れな時期はよくぶつかって墜落します。でもコントローラーの使い方は原則大きい機体でも小さな機体でも同じなのでコントローラーを使えるようになるための初めてのドローンとしては良いと思います。また機体が小さいので部屋の中でも小回りが利きます。(Mavi Miniは室内で飛ばすとやや狭く、車で狭い道を曲がるときのように切り返して操縦する必要があります。)撮影も可能ですから、最初はTelloからドローンを始めましょう。
次は「Mavic Mini」です。この機体も199g(機体+バッテリー)ですので、航空法の影響はありません。ただし、「Mavic」というDJIのフラッグシップ・モデルの一環を支えていることから、「おもちゃ」とは言えないものがあります。
Telloとの違いは、①GPS機能を搭載し無線もきちんとつながる、②カメラがジンバルによって安定的に撮影できる、という点でしょうか。
①によりHomeToReturn機能があり、どこかに行っても戻ってくるはずですし、風であおられても位置を確保できるはずです。ただし、「はず」と書いたのは、私見ではGPSを捉える機能が弱くほとんどアンテナが立たないため、外で飛ばしても目視できないと不安だからです。この点は上位機種のMavic2等は強力なようです。このため、私はこの機体で低層建物(3階建てくらいまで)の調査には使用できると思っていますが、10階等の高層建物になると調査することは困難と感じています。
⓶のジンバルについて説明します。正面写真の中央にカメラがありますが、実はこのカメラ、グラグラしています。グラグラさせることにより機体が揺れても滑らかな動画を撮影できるようになっています。このカメラの支持体をジンバルといいます。ドローン映像が、滑らかな画像が実現できている理由はこのジンバルの機能があるからです。因みにこのジンバル、手持動画撮影用としても販売されています。スマホをセットすると滑らかな動画が撮影できますよ。
コントローラーの使い方は「モード2」という多数派の使い方で説明します。コントローラーの使い方はモード2をマスタすれば原則どんなドローンも飛ばせます。右のスティックを前なら前方向背進み、同様に右、左、後とそれぞれ進みます。「高さ」と「進行方向」を決めるのが左のスティックです。「高さ」は前に倒せば上昇、後に倒せば下降します。右に倒せば機体は右を向き、左に倒せば機体は左を向きます。
私は毎日、朝起きたら30分づつ室内で飛ばしています。大体バッテリー一つでTelloの場合、13分とありますが、10分はどうかなという程度、Mavic Miniの場合、18分とありますが、プロペラガードをつけると重くなるため11分程度しか飛びません。最後の方はバッテリー警告が鳴るので、バッテリー3本併せて30分位の飛行時間です。
毎日、「8の字飛行」と「ノーズ・イン・サークル(中央に棒を立てて機種を棒に向けたまま棒の周りを回転する)を行いますが、室内は狭く、せいぜい1mくらいの円しか描けないので、大変難しいです。
このような練習を行っていましたが、5月にTelloが墜落し動かなくなってしまいました。これを機会に前から欲しかったMavic Miniを購入し屋根の撮影にトライすることにしました。Telloは地元のPC屋さんで購入しましたが、何を聞いてもわからない店だったので、Mavic Miniの購入の際はドローンに詳しいところを探し、虎ノ門にある「セキド」という会社を見つけました。ここはDJI正規代理店であり、利用方法やドローン機種ごとの違いなど十分に説明を受け、Mavic Miniをゲットしました。ドローンは普及度が低いうえ、法的な知識や使用目的に合った性能などを熟知していないといけないので、買う店は選んだ方が良いと思います。因みに「セキド」については、説明とセットアップをしっかりとやって頂き、大変助かりました。
次に、Mavic Miniで屋根(自宅)を調査できるかを調べました。私の自宅は目黒にあり、羽田空港の管制圏内にあるため東京航空局に電話し自宅が高度200m以内であれば飛行可能であることを確認しました。(20mも飛べれば十分なので問題ありません。)次に道路交通法に抵触するのではないかと碑文谷警察署に電話しましたが、ここで思わぬことが判りました。自宅から離着陸し自宅の敷地内を飛行するなら道路交通法には抵触しないのですが、周りの住人にドローンを飛ばす日時を周知し碑文谷警察署(警備課)にもその旨を書面で渡してほしいというのです。さらに飛行開始時と終了時に警備課に電話が欲しいというのです。理由は住民から「ドローンを飛ばしている」という話が出た時に対応できるようにとのことでした。碑文谷警察署によれば、これはほかの警察署でも必要になるとのことでした。
このような手続きを終了し、ドローンを自宅屋根の撮影のため、飛ばしてみました。風がないかを確認して開始です。(風速計で測ります。風速5m以上はNGです。)空を見上げると、電線と屋根の間のスペースは狭い!不安に思いながらも離陸し、そのスペースを掻い潜って屋根の上空へ!屋根の上空でスマホ越しに見たものは、そう、テレビアンテナでした。アンテナがあるなんて、すっかり忘れていました。アンテナにぶつからないよう注意し、屋根の撮影をしたのが下の映像です。
外でドローン飛ばすのは、やはり怖いです。室内で飛ばすのとは、大きな違いだなと思いました。