東京の道路(2)環状道路(一般道路)
道路の3つの名称
道路の名称にはa.道路台帳に記載された名称、b.通称道路名、c.都市計画法に関連する名称があります。
a.道路台帳に記載された名称は、「東京都道305号芝新宿王子線」といった行政名称+番号で表示されることが多い。東京の場合、国道は東京国道事務所、都道は「東京都建設事務所」(第一から第六まである)で確認できます。特別区道については区役所で確認できます。
b.通称道路名は「明治通り」等の名称である。東京の場合、国道・都道の通称道路名は東京都建築局「東京都通称道路名検討委員会」が昭和37年・38年と昭和59年の2度にわたって決定しています。従って俗称というわけではありません。特別区道などは各特別区が同様の委員会で決定していることがあります。
c.都市計画法に関連する名称として「東京都市計画道路幹線街路環状5号線」(以下、「環状五号線」等と表現)等があります。昭和20年12月、「戦災地復興計画基本方針」が閣議決定され、これを受け、東京都は昭和21年に「東京戦災復興都市計画」を決定しました。その後、都市計画法を背景に東京都都市整備局が道路を敷設しています。
そして以上で掲げた「東京都道305号芝新宿王子線」「明治通り」「東京都市計画道路幹線街路環状5号線」は概ね同じ道路を指しますが、「東京都道305号芝新宿王子線」≒「明治通り」≒「東京都市計画道路幹線街路環状5号線」であって、「東京都道305号芝新宿王子線」=「明治通り」=「東京都市計画道路幹線街路環状5号線」ではありません。(後述)このように道路の名称は違った名称が存在するため、都心部のように道路が複雑な場合、道路について正確に表現することは困難が伴います。
環状道路
環状道路は上記c.都市計画法に関連する名称です。そして現在も東京都都市整備局が整備を進めています。環状道路の役割は放射道路の交通量を分散・緩和することに主眼があります。
環状道路について、これまでに環状八号線、環状七号線、環状六号線(山手通り)について多岐にわたって書いてきました。これと同様に、環状一号線(東京都市計画道路幹線街路環状1号線)から環状五号線(東京都市計画道路幹線街路環状5号線)までが存在します。ただし上の地図をご覧いただければわかるように、環状三号線から環状五号線までは未開通部分も多い状況です。また環状四号線と環状五号線は、北部において、同じ「明治通り」なのに、西側が環状五号線、東側が環状四号線と途中から変わるなど、大変わかりにくい部分を含んでいます。さらに多くの環状道路は複数の通称道路名を含んでいます。率直に言って環状道路を自転車で走っていても知らぬ間に環状道路から外れてしまったり、地図を描こうとしてもどの道路が環状道路に該当するのか迷ったりしました。放射道路は比較的わかりやすいのに比べ、環状道路を把握するのは難易度が高いと思います。
それでは、環状一号線から環状五号線まで、順に述べてゆきます。なお、道路台帳に記載された名称については複雑になるので割愛します。
環状一号線
環状一号線は皇居の外周道路です。具体的には「内堀通り」を基本に東側が「日比谷通り」となります。そして内堀通りと日比谷通りを結ぶのが北側が「永代通り」、南側が「晴海通り」です。「内堀通り」の北側は「靖国通り」と一部重複します。
前回述べたように環状一号線は「桜田通り(国道1)」「国道246」「甲州街道(国道20)」「目白通り」「靖国通り(西側「青梅街道」、東側「京葉道路」)」「永代通り」「晴海通り」等の放射道路の始点となっています。
駅では東京メトロ東西線「大手町」「竹橋」「九段下」、半蔵門線「半蔵門」「永田町」、有楽町線「桜田門」「日比谷」、千代田線「二重橋」といった駅が接しているか、近くにあります。
環状二号線
環状二号線は「外堀通り」+「環二通り」です。
「外堀通り」は「秋葉原」「お茶の水」「水道橋」「飯田橋」「市ヶ谷」「四谷」「赤坂見附」「溜池山王」「虎ノ門」と環状一号線の外側を走ります。
「環二通り」は「虎ノ門」「内幸町」「新橋」「汐留を通り、その後、晴海通りと並行して「有明」の国際展示場近辺まで直進します。
虎ノ門ー新橋間は長らく開発の停滞していた区間ですが、2014年に開通しました。同年に竣工した虎ノ門ヒルズの地下を通り、新橋までの幅員は40mあります。虎ノ門ヒルズの竣工、環二通りの開通に伴い、この近辺の事務所、店舗等の商業施設の集積度が高まっているのが実感できる地域となっています。2020年には東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ」駅も実用化されました。
環二通りのうち、新橋から有明までの区間は外堀通りの尻尾のようです。この部分は東京都の新しい副都心である「臨海副都心」(有明、台場、青海)と都心部を結ぶ道路となっています。環状道路というより放射道路の役割を担っていると思われます。
環状三号線
環状三号線は「清澄通り」+「外苑東通り」+「播磨坂」+「言問通り」+「三ツ目通り」です。貴澄通りー外苑東通り間、外苑東通りー播磨坂間、播磨坂ー言問通り間が未開通部分となっており、環状四号線と並んでわかりにくい環状道路となっています。
完成すれば、「勝どき」「浜松町」「麻布十番」「六本木」「乃木坂」「青山一丁目」「信濃町」「曙橋」「牛込柳町」「早稲田鶴巻町」「小石川植物園」「根津」「鶯谷」「入谷」「浅草」「菊川」「木場」「辰巳」を繋ぎます。
外苑東通りのうち、六本木ー青山一丁目間はバイパスになっています。この部分は「外苑東通り」という呼称ではありません。自転車で走ると特に六本木ヒルズー乃木坂間は怖いです。六本木ヒルズの交差点、どの信号を見て渡ればよいのかわからず、六本木トンネルは車道を走って恐ろしいです。
環状四号線
環状4号線は「外苑西通り」+「抜弁天通」+「夏目坂通り」+「早稲田通り」+「不忍通り」+「明治通り」+「丸八通り」です。
完成後の予定では、外苑西通りから国道15号高輪付近まで延長されこの部分が未着工のほか、外苑西通りー抜弁天通り間、早稲田通りー不忍通り間が未着工です。また、「抜弁天通」+「夏目坂通り」+「早稲田通り」は自転車で走ってみても環状四号線である、という確信が持てませんでした。また不忍通りは目白通り(日本城址大学付近)から西日暮里付近の道灌山下交差点で左折し道灌山通りで西日暮里を経由し宮地というところで明治通りに接続これを右折します。従って上野方面へ行く道ではありません。また明治通りについてはこの宮地の交差点の左側が環状五号線であり、この宮地の交差点をもって、環状五号線が環状四号線に変わります。因みに明治通りは環状四号線部分も環状五号線部分も道路台帳上は「東京都道306号王子千住夢の島線」です。そして、東武亀戸線小村井駅付近の「小村井」の交差点で明治通りは南下しますが、明治通りから離れ、ほぼ直進する形で丸八通りへ接続、江東区の東京メトロ東西線南砂駅付近までゆきます。環状三号線と共に非常に困惑する環状道路です。
完成後は、「高輪」「白金台」「広尾」「西麻布」「千駄ヶ谷(国立競技場)」「四谷四丁目」「若松河田」「早稲田」「目白台」「護国寺」「仙石」「西日暮里」「宮地(荒川五丁目交番)」「三ノ輪」「東向島」「小村井」「亀戸水神」「大島」「南砂町」を繋ぎます。
なお、上記の写真は白金台で目黒通りから外苑西通りに入りますが、この部分は「白金台」という地名と掛けて「プラチナ通り」といわれています。
環状五号線
環状五号線は、上記で説明した環状四号線に変わるまでほぼ「明治通り」です。
環状五号線にも特徴があります。その一つが、明治通りの一番北の辺り(王子周辺)で道が複雑となりわずかな区間、環状五号線は途切れてしまいます。明治通りの南側スタートは外苑西通りとの交差点「天現寺」交差点からですが、ここから王子周辺(飛鳥山交差点)までを「環状第5の1号線(環5ノ1)」、王子(溝田橋交差点)から環状四号線に代わる「宮地」の交差点までを「環状第5の2号線(環5ノ2)」といいます。
もう一つは、池袋の南側「雑司ヶ谷」と新宿御苑地下でバイパス工事をしていますが、この範囲は明治通りと異なります。(明治通りは上記地図で茶色になっている部分です。)令和6年完成を目指しています。
環状五号線は「天現寺」「恵比寿」「渋谷」「「新宿」「西早稲田」「雑司ヶ谷」「池袋(北東付近)」「西巣鴨」「王子」「梶原」「田端新町」「新三河島」「宮地」を繋ぎます。このように環状五号線は副都心を結ぶ重要な道路となっています。
環状道路を描いてみて
環状道路は本当に複雑です。放射道路は昔からある幹線道路が中心ですが、環状道路は戦後、設計されました。複数の既存道路を組み合わせ、あるいは新たに敷設しています。環状一号線から環状五号線では、環状道路を構成する通称道路名が知れ渡っているために環状線としての認知も低い水準にあると思われます。しかし都心の効率性や利便性を考えると、環状道路を完成させることに十分な意義を見出すことができると思いました。