東京の河川(2)東京南部の中小河川
東京南部の4河川
東京南部には4つの河川があります。都心側から「渋谷川(天元橋以降は「古川」)(延長9.0km)」「目黒川(三宿で「烏山川緑道」と「北沢川緑道」が合流。(7.8km、烏山川緑道と併せて19.5km)「立会川(7.4km)」「呑川(14.4km)」です。神田川や石神井川と異なり原則として東京湾に流入する河川です。
渋谷川
「渋谷川」をご覧になってことはありますか?渋谷川は渋谷駅の南東を始点として明治通りと山手線の間を走る河川です。天現寺橋から高架下となり「古川」と呼称が変わります。ここから先は最後まで「首都高速都心環状線」の高架下を走ります。その後「古川橋」の交差(白金・麻布の境)で大きく左折はし麻布十番で右折、赤羽橋、芝公園、浜松町を経由して東京湾に注ぎます。
渋谷川は渋谷川という名前の時は明治通りの裏を、古川という名前の時は高架下を走るため、人目に触れづらく周囲の環境も優れないことから東京都心を流れる川としては非常にマイナーと思われます。これは日本橋川に代表されるように昭和期に高速の敷設にあたり川の上空を利用したことが大きな理由と思われます。また渋谷川の両サイドは商業地域、準工業地域となっているところが多く住宅地域と異なり居住性は重視されず収益性を確保するために土地の容積率等を一杯に活用する傾向が強かったことも理由に挙げられるかもしれません。渋谷、広尾、白金、麻布等のお洒落で高級な地域を流れる渋谷川(古河)はもっと美しい河川であってほしいですね。
現在、渋谷の再開発に伴い渋谷川は見直しがなされようとしているようです。日本橋川も高架が取り除くことを検討しているようですし、渋谷川もその景観を生かしたまちづくりがなされる日が来るかもしれません。
目黒川
「目黒川」は国道246号のやや北側、三宿2丁目から池尻大橋、中目黒、目黒、五反田、新馬場を経由して天王洲アイル付近で東京湾にそそぐ2級河川です。
目黒川は現在、桜の名所として知られるようになりました。特に中目黒付近では約800本の染井吉野をライトアップする桜祭りは有名になりました。目黒川沿いに中目黒から池尻大橋及び目黒駅に向かって歩くとお洒落な飲食店等が軒を並べ、中目黒ー代官山ー恵比寿という人気の高いトライアングルの一角を形成しています。
しかし以前の目黒が周辺は現在と比較してあまりお洒落な街とはいえませんでした。今でも中目黒付近から池尻大橋あたりまで目黒川の両岸は準工業地域となっています。(隣接して青葉台の高級住宅街となりますが)洪水も多く、直近では平成元年に下目黒の付近で洪水が発生していますが、近年は調節池等の整備により河川の氾濫も大幅に減少しています。(河川の洪水については後日調査の予定です。)現在は下目黒の辺りから下流域でもマンションが連なる地域となっていますが、従来の準工業地域の雰囲気は鳴りを潜めて恵まれた住環境を形成するようになっています。既に高級マンション街と呼んでもよい地域になりました。
目黒川の始点では「烏山川緑道」と「北沢川緑道」が合流しています。烏山緑道は千歳船橋のやや南から、北沢緑道は経堂駅のやや北西から始まる緑道ですが、緑が豊富で一部公園等の機能を備え住宅地域を中心とした世田谷の美しい緑の空間に寄与しています。
中目黒にはもう一つ支流があります。中目黒付近で合流する「蛇崩川緑道」です。この緑道は馬事公苑付近から地表に出て駒留陸橋の辺りで環七を渡ります。付近には環境の良い住宅街が広がります。
以上のように、近年において目黒川は渋谷川とは対照的に、そこに生活する人が親しみを深める性質(親水)があります。
立会川
「立会川」は目黒区にある碑文谷公園や清水池公園にその源泉があります。しかし立会川のほとんどは暗渠(地下に埋設し水面が見えない水路)となっています。そしてJR京浜東北線・大井町駅を越えてしばらく緑道となりその後初めて水面が顔を出します。はっきり河川と認識できるのは第一京浜(国道15号)の西側から京浜急行・立会川駅の脇を通り勝島運河に抜ける僅かな区間だけです。
それでは立会川のような暗渠はどのように確認をすればよいでしょうか?一つの方法は下水道台帳を確認する方法があります。東京の場合、下水道台帳は都庁第二庁舎 台帳閲覧室 (27階)で見ることができますが、東京都下水道局のホームページの中から「下水道台帳」を見るのが簡単です。
立会川の場合、碑文谷公園のすぐ下から「碑文谷幹線」という下水道が流れ、辿ってゆくと碑文谷一丁目付近で「立会川幹線」に合流します。これが正に立会川です。そのまま立会川幹線を辿ってゆくと大井町駅を通り越して区立大井保育園のところで「立会川」になります。このようにして暗渠から昔の川を知ることができる場合があります。暗渠探索は東京のような都会では、古くからの河川の流れを知るのに有用です。
先に書いた「烏山川緑道」「北沢川緑道」も同様に「烏山幹線」「北沢幹線」として下水道台帳に載っていますし、次の「呑川」やその支流「九品仏川緑道」も暗渠については「呑川幹線」「九品仏幹線」を見ることができます。ただし暗渠のすべてが下水道となっている訳ではなく、東京都建設局や特別区(目黒区等)が所有・管理していることも多いとのことです。下水道台帳にない場合は各自治体などに確認してみましょう。
呑川
「呑川」は桜新町付近を源流として国道246号の南側から地表を流れ、深沢7丁目から8丁目にかけて「親水公園」として水辺の動植物とも接することのできる公園となっています。この区間を過ぎると暗渠となり深沢―八雲と下り東京東横線・都立大学駅の脇を通って緑が丘を越えると再び地上を流れるようになります。また緑が丘では自由が丘方面からくる「九品仏川緑道」と合流します。その後、久が原、池上、蒲田を経由して海老取川にぶつかり東京湾へ注ぎます。
以前にも書きましたが、世田谷区深沢や目黒区八雲は質の良い住宅街となっています。(東京の郊外の土地価格を調べてみた。)この近くには駒沢公園がありその一帯は呑川のある高台として住環境が高くなっているためです。ただ交通面から言うと東急東横線・都立大学駅から上るか、東急田園都市線・駒沢駅、桜新町駅から歩くかとなり必ずしも駅近とはなりませんが、その分画地の大きな自己居住用の住宅街となっています。
また九品仏川緑道については、自由が丘が好きな方ならご存じの道ではないでしょうか。東急東横線・自由が丘駅南口から一本隔てた緑道です。有名なところでは「自由が丘スイーツフォレスト」等の飲食、ファッション系の店も幅広く営業している自由が丘でも屈指の通りです。自由が丘はお洒落なイメージですが歩道のない細い道も多く雑な部分も多い街ですが、この九品仏川緑道は道幅も広くショッピングもしやすい良い通りとなっています。緑道沿いはこのように環境に恵まれ住環境の良い地域が多くなっています。
さらに呑川には「洗足池」から流れてきた水路も合流します。洗足池は大田区南千束にある池で、通常は多くの家族連れがボート遊びなどに興じる光景が見られます。この洗足池は中原街道に面していますが、洗足池の周辺も優れた住宅街となっています。
このように呑川水系は東京南部の優れた住宅地域を流れ、その地域の住環境に大きく寄与している河川です。この河川で私が残念だと思うことはこの「呑川」という名前です。ウィキペディアで由来を調べても「その昔牛が誤って川に落ち水を飲んでしまうことがあったから」などという俗説しかありません。このような理由でこの素晴らしい川の名前がついているのは悲しく思えます。桜新町が源泉で呑川沿いには桜も多いから「桜川」はどうでしょうか?茨城県の川の名前で既にあるようですが。