東京周辺の鉄道(2)乗降者数の多い路線と駅
路線の乗降者数、駅の乗降者数(2018年)
上記の路線図は2018年の1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)の駅について、路線ごとの乗降者数と駅ごとの乗降者数をまとめたものです。(国土数値情報サービスより引用)従って、中央本線では山梨県~愛知県にある駅のの乗降者数、東海道本線では静岡県~大阪府にある駅の乗降者数、東北本線では栃木県~岩手県にある駅の乗降者数、常磐線では茨城県~宮城県にある駅の乗降者数は含まれていません。また上記の路線図で地下鉄は除外しています。路線については、青で示した路線が1位~5位、紫で示した路線が6位~10位となっています。駅については、赤で示した駅が1位~10位、オレンジで示した駅が11位~30位となっています。駅名の表示については、山手線とその中にある駅以外の駅を表示しています。具体的には次の表の通りです。
路線ごとの乗降者数 (2018年度)(地下鉄を除く)
順位 | 路線名 | 乗降者数 | 順位 | 路線名 | 乗降者数 |
1 | JR中央本線(東京~名古屋) | 5,785,468 | 6 | 東急東横線 (渋谷~横浜) | 3,069,182 |
2 | JR東海道本線 (東京~大阪) | 5,522,656 | 7 | JR東北本線 (東京~盛岡) | 2,779,296 |
3 | JR山手線 (環状線) | 5,017,600 | 8 | 京王線 (新宿~京王八王子) | 2,390,065 |
4 | 小田急小田原線 (新宿~小田原) | 3,283,294 | 9 | JR常磐線 (上野~仙台) | 2,254,986 |
5 | JR総武本線 (東京~銚子) | 3,230,915 | 10 | 東武東上線 (池袋~寄居) | 2,039,706 |
区間は全線区間を示します。(単位:人/日)
※国土数値情報のデータでは、同一の駅で同一の鉄道会社は全て1つの路線に集約されています。J(例えば東京駅は東海道線に集約され、中央本線、東北本線には含まれていません。)
- JR中央本線(神田からすべての駅を含みます。)
- JR東海道本線(東京からの駅で、品川、川崎、鶴見を除きます。)
- JR山手線(品川~渋谷~田端間で、新宿を除きます。)
- JR東北本線(東京、神田、秋葉原、日暮里は含まれず、御徒町からすべての駅を含みます。)
- JR常磐線(日暮里からのすべての駅を含みます。)
路線別にみると、JRが非常に強いのが判ります。JR山手線は環状ですが、JR中央本線、JR東海道本線、JR総武本本線、JR東北本線は東京駅から、JR常磐線は上野駅(厳密には日暮里駅)から地方へ向かう放射型の路線です。JRの放射型の路線は道路(街道)に対応していると思います。JR東海道本線は東海道と、JR中央線は中山道と、JR東北本線は奥州街道と、JR常磐線は水戸街道と対応しています。JR総武線は対応する道路はなさそうです。やはり街道沿いに走る路線は乗降者数も多いようです。前回も記載しましたが、京浜東北線と中央・総武緩行線(黄色い総武線)はわかりずらいので、補記しておきます。
※京浜東北線は大宮~東京が東北本線、東京~横浜が東海道線に含まれます。
※三鷹~千葉間の黄色い中央・総武緩行線はお茶の水~錦糸町が「総武緩行線」という総武線の支線であり、三鷹~お茶の水は中央本線に含まれます。
JRの強みは主要都市を結ぶというだけでなく、複々線(上り2線、下り2線)の区間が非常に長いことも挙げられます。中央本線ではお茶の水~三鷹(21.5km)、東海道本線では東京~小田原(83.9km)、東北本線では東京~大宮(30.5km)、総武本線では錦糸町~千葉(34.4km)、常磐線では北千住~取手(32.2km)が複々線として運行されています。これらの区間では緩急分離運転がされています。例えば東海道本線では、京浜東北線が普通列車として東海道線が特急列車等として運行されています。さすがに元国有鉄道ですね。
私鉄に関しては、4位に小田急小田原線、6位に東急東横線、8位に京王線、10位に東武東上線が入ります。
4位の小田急小田原線は新宿~小田原(82.5km)を結び、JRに負けない非常に長い路線です。また複々線事業も2019年3月に代々木上原~登戸(10.4km)が完了しました。従って4位というのは妥当でしょう。
東急東横線は渋谷~横浜(24.2km)に過ぎないのにもかかわらず6位となっています。複々線に関しては田園調布~日吉(5.4km)が完了していますが、これは東急東横線と東急目黒線の重複区間であり、緩急分離運転のためではありません。従って6位というのはかなり凄いことだと思います。更に2022年度下期のスケジュールで、相鉄線が日吉で乗り入れる予定をしています。私は東急東横線をよく利用しますが、今後の混雑が心配です。
8位に京王線が入りました。京王線は新宿~京王八王子(37.9km)を結び、複々線区間は新宿~笹塚(3.6km)で、この区間は京王線と京王新線(都営新宿線乗り入れ)の区間であり緩急分離運転が目的ではありません。京王線は高架や地下化が遅れていましたが、調布駅を中心に柴崎~西調布(2.8km)にわたって地下化が完了しました。調布周辺は空地ができ今後の発展が期待できるエリアとなっています。
10位には東武東上線が入っています。東武東上線は池袋~寄居(75.0km)を結ぶ長距離列車です。複々線区間は和光氏~志木(5.3km)です。東武東上線は今後、調査したいと思います。
以上のほか、主たる私鉄では田園都市線(渋谷~中央林間、31.5km、乗降者数約183万人/日)、東武伊勢崎線(浅草~伊勢崎(群馬県)、114.5km、1都3県乗降者数約183万人/日)、西武池袋線(池袋~飯能、57.8km、乗降者数約167万人/日)、西武新宿線(西武新宿~本川越、47.5km、乗降者数約133万人/日)を挙げることができます。
駅ごとの乗降者数 (2018年)(地下鉄のみの駅を除く)
順位 | 駅名 | 乗降者数 | 順位 | 駅名 | 乗降者数 | 順位 | 駅名 | 乗降者数 |
1 | 新宿 | 4,225,110 | 11 | 西船橋 | 870,580 | 21 | 蒲田 | 461,931 |
2 | 池袋 | 2,682,094 | 12 | 押上 | 815,044 | 22 | 大井町 | 444,975 |
3 | 渋谷 | 2,497,806 | 13 | 秋葉原 | 769,655 | 23 | 吉祥寺 | 435,557 |
4 | 横浜 | 2,481,105 | 14 | 大宮 | 702,577 | 24 | 川崎 | 429,202 |
5 | 北千住 | 1,296,803 | 15 | 上野 | 592,161 | 25 | 飯田橋 | 418,550 |
6 | 東京 | 1,152,605 | 16 | 有楽町 | 523,373 | 26 | 恵比寿 | 415,337 |
7 | 品川 | 1,055,080 | 17 | 町田 | 518,652 | 27 | 藤沢 | 409,955 |
8 | 新橋 | 986,926 | 18 | 目黒 | 516,781 | 28 | 西日暮里 | 402,518 |
9 | 高田馬場 | 933,963 | 19 | 武蔵小杉 | 487,536 | 29 | 柏 | 400,695 |
10 | 綾瀬 | 909,468 | 20 | 五反田 | 469,334 | 30 | 船橋 | 393,901 |
(単位:人/日)
今回、国土交通省の国土数値情報をエクセルにピボットテーブルで集計しています。従って複数の路線が交わる駅ではその合計数が表示されています。今回、地下鉄のみの駅は乗降者数が多くても省いていますが、新宿や池袋の乗降者数の中には地下鉄の乗降者数も含んでいます。
駅の乗降者の理由は乗り換えも含まれます。山手線の各駅には私鉄や地下鉄が数多く乗り入れるため、上記の表では50%15駅は山手線の駅となっています。そこで、上記の駅のうち山手線の上位5駅と山手線以外の駅について考えたいと思います。
山手線の上位5駅
- 新宿(山手線(埼京線を含む)、中央線(中央線快速、中央・総武緩行線を含む)、小田急小田原線、京王線、丸の内線、都営新宿線、大江戸線)
- 池袋(山手線、赤羽線(埼京線)、東武東上線、西武池袋線、丸の内線、有楽町線、副都心線)
- 渋谷(山手線(埼京線を含む)、東急東横線、田園都市線、京王井の頭線、銀座線、半蔵門線、副都心線)
- 東京(山手線、中央線(中央線快速を含む)、東海道線(京浜東北線・横須賀線を含む)、東北線、総武線、京葉線、武蔵野線、丸の内線)+(新幹線)
- 品川(山手線、東海道線(京浜東北線・横須賀線・総武線を含む)、京浜急行(本線・空港線、浅草線接続を含む))
「新宿」はJR山手線、中央線に加え、私鉄の雄・小田急線と京王線のターミナルステーションです。新宿という地域も従来からの東口、超高層ビル群の西口と繁華性が高く街の魅力も高いことから1位というのは当然です。「池袋」は山手線と大宮方面へのビル埼京線に加え、東武東上線と西武池袋線のターミナルステーションとなっています。近年では東武東上線・西武池袋線のいずれとも接続する副都心線も加わり利便性も高まっています。「渋谷」は山手線の他、私鉄で東急東横線・田園都市線・京王井の頭線のターミナルステーションになっています。埼京線の駅を移動し周辺には多くの超高層ビルが次々と計画的に完成し、渋谷の繁華性はますます高まっています。「新宿」「池袋」「渋谷」は東京西部や埼玉、神奈川方面に広がる住宅地域の人々の通勤における東京の玄関口となっています。
「東京」はJRの多くの路線の始発となります。最も多くの乗降者数となっていない理由は、通勤の玄関口が北は「北千住」、東は「西船橋」、南は「品川」、西は「新宿・池袋・渋谷」が通勤の玄関口となっているため、東京に到達する前に分散されてしまうからと私は考えています。
「品川」は東海道線や横須賀線、京浜急行等、横浜・川崎方面からくる南の玄関口です。品川は羽田空港への入り口という役割もあり、さらにリニアモーターカーにおいては始発駅となります。今後、東京の鉄道の拠点は品川に比重をかけてくるものと考えられます。
山手線以外の乗降者数の多い駅(赤で記載している駅)
山手線以外の乗降者数の多い駅は①通勤の玄関口としての役割を果たす駅と②各地域の中核都市としての駅に大別されます。
①通勤の玄関口としての役割を果たす駅
- 北千住・綾瀬・押上・・・北千住は常磐線の他、東武伊勢崎線・つくばエクスプレス、地下鉄の日比谷線・千代田線の乗換駅となっている。常磐方面、埼玉方面からの通勤の実質的な玄関口になっており、従来、上野が果たしていた北の玄関口としての役割を北千住が担うようになったと私は考えています。常磐線から千代田線への乗り換えは北千住等であっても綾瀬の乗降者にカウントされるため、綾瀬の乗降者数が多いのはテクニカル上の問題と判断します。押上は東武伊勢崎線ー半蔵門線、京成押上線ー浅草線の乗換駅であり北千住を補完し、さらにはスカイツリーの完成により観光面での大きな役割を果たしている駅です。
- 西船橋・船橋・・・西船橋はJR総武線、京葉線、武蔵野線と東西線の乗り換えとなる。また近接して京成西船橋もあります。このため、西船橋は千葉、成田(総武線と佐倉で分かれる成田線)、銚子と千葉県からの通勤が集中し玄関口としての役割を果たしています。船橋は総武線と東武野田線が走り、京成船橋と近接することにより西船橋を補完しています。
②各地域の中核都市としての駅
- 横浜・・・神奈川県の中心都市。東海道線の他、東急東横線・相鉄線のターミナルステーションとなっています。
- 大宮・・・大宮駅は新幹線が東北新幹線・山形新幹線・秋田新幹線・北海道新幹線・上越新幹線・北陸新幹線と分岐の中心となり、在来線についても東北本線、川越線、高崎線さらには東武野田線のターミナルステーションとなっています。さいたま市は、行政の中心は浦和であるが、鉄道の中核は大宮といえます。
- 町田・吉祥寺・・・東京西部の中核都市。
- 蒲田・大井町・川崎・・・東京南部とその隣接地である。羽田空港への利便性が高く、品川を中心とした発展の影響が強い地域です。
- 藤沢・・・東海道本線・小田急江ノ島線・江ノ島電鉄(江ノ電)が乗り入れています。神奈川県・湘南地域を代表する街で、鎌倉・江の島等は観光・住宅地としての人気が高く、藤沢は玄関口としての役割を果たしています。
- 柏・・・千葉県・北部を代表する街。常磐線と東武野田線が交差します。