東京周辺の鉄道(3)乗降者数の増加している路線と駅
上記の地図は2018年の乗降者数の増加率の高い路線と駅をまとめたものです。本データも国土交通省の国土数値情報ダウンロードサービスのデータをもとに集計をしていますが、例えばJRの場合、東京駅の乗降者数は東海道線にすべて算入され、平成18年と平成13年の集計の方法が異なっていると思われる場合も多いので、路線については私がデータに独自に修正を加えています。(駅の乗降者数は修正していません。)従って路線については私の解釈が含まれているとお考え下さい。
乗降者数 の増加率の高い路線(2018年、2013年対比)(1都3県地下鉄を除く)
順位 | 路線名 | 乗降者数 | 順位 | 路線名 | 乗降者数 |
1 | つくばエクスプレス | 121.2% | 6 | 埼玉スタジアム線 | 128.8% |
2 | JR京葉線(東京~蘇我) | 115.5% | 7 | 京急空港線 | 124.0% |
3 | JR南武線 | 112.7% | 8 | 江ノ島電鉄線 | 115.4% |
4 | JR武蔵野線 | 111.4% | 9 | みなとみらい線 | 113.0% |
5 | 日暮里・舎人(とねり)ライナー | 133.0% | 10 | りんかい線 | 113.0% |
(単位:人/日)
路線別の乗降者数の上昇率が高い路線については、1-4位には乗降者数が多く伸び率も高い路線を選び、5-10位には乗降者数が多くはないが大きな伸び率の路線を選んでいます。路線ごとの特徴は次の通りです。
- つくばエクスプレス(常磐新線)・・・2005年に開業し、秋葉原~つくば間を結ぶ路線です。「常磐新線」という正式名称の通り常磐線の北側で今まで路線の空白地帯であった地域を走ります。路線の交わる途中駅は「北千住(常磐線、東武伊勢崎線等)」「南流山(武蔵野線)」「流山おおたかの森(東武野田線)」「守谷(関東鉄道常総線)」です。つくばエクスプレスは茨城県つくば市を始め、千葉県柏市や流山市、埼玉県三郷市や八潮市などを通過し、現在も高層マンションや住宅街の開発が続いている地域となっています。
- JR京葉線・・・東京~千葉県・蘇我を結ぶ路線です。総武線や京成本線・千葉線と並行し湾岸沿いを走ります。近未来的な超高層ビル群の「海浜幕張」、東京ディズニーランドへの最寄り駅である「舞浜」といえば納得いただけると思います。しかし東京都心部の「八丁堀」「越中島」「潮見」「新木場」等の都心部の駅でも5年間で2割前後の乗降者数の増加がある点にも着目すべきでしょう。
- JR南武線・・・川崎~立川を結ぶ路線です。「川崎」では東海道本線と「立川」では中央本線、青梅線、多摩モノレールと乗換駅となっています。路線の交わる途中駅は「武蔵小杉(東急東横線)」「武蔵溝ノ口(田園都市線)」「登戸(小田急小田原線)」「府中本町(JR武蔵野線)」です。京王相模原線とは「稲田堤」で近接します。この路線の特徴は、「尻手」「矢向」「宿川原」「武蔵新庄」「稲城長沼」等の他の路線と交わらない駅でも1割以上の乗降者数の上昇がみられる点です。
- JR武蔵野線・・・東京からJR京葉線を走り、武蔵野線自体としては西船橋~府中本町を結ぶ路線です。「府中本町」ではJR南武線と乗り換え駅となります。路線の交わる途中駅は「西船橋(総武線、東西線、東葉高速鉄道)」「東松戸(京成成田空港線)」「新八柱(新京成線)」「新松戸(常磐線)」「南流山(つくばエクスプレス)」「南越谷(東武伊勢崎線)」「東川口(埼玉スタジアム線)」「南浦和(東北本線)」「北朝霞(東武東上線)」「新秋津(西武池袋線)」「西国分寺(中央本線)」です。この路線では乗換駅の乗降者数が増加し、その他でも「新三郷」「吉川美南」「武蔵浦和」「西浦和」「新座」「北府中」等でも1割以上の乗降者数の増加がみられます。
- 日暮里・舎人ライナー・・・「日暮里(荒川区)」~「見沼代親水公園(足立区)」を結ぶ東京都交通局のモノレール状の無人新交通システムです。尾久橋通り上を走り荒川を超え「竹ノ塚」の辺りまで行きます。2008年に開業しましたが、この地域は鉄道の空白地帯であったため需要が想定を超えラッシュ時の混雑は高いレベルとなっています。「熊野前」で都電荒川線(東京さくらトラム)に乗り換えができます。
- 埼玉スタジアム線(埼玉高速鉄道線)・・・2001年開業の「赤羽岩淵」~「浦和美園」を結ぶ地下鉄です。赤羽岩淵では南北線と乗り入れをしています。終点の浦和美園は埼玉スタジアム最寄駅となり、「東川口」で武蔵野線と乗り換えができます。埼玉スタジアム線も鉄道空白地帯を埋める目的がありましたが、当初、利用予測を下回る路線でした。しかし近年乗降者数も順調に増加しています。
- 京急空港線・・・品川~蒲田~羽田空港を結ぶ路線で、空港線は蒲田~羽田空港第1・第2ターミナルを言います。コロナ前までの羽田空港の活発な需要に対応し乗降者数も増加してきました。羽田空港関連の駅だけではなく、全ての駅において乗降者数は高い伸び率を表し、羽田空港近辺が商業地域・住宅地域として需要が高まっていることが判ります。
- 江ノ島電鉄線(江ノ電)・・・「平塚」~「鎌倉」を結ぶ路線です。「江ノ島」「七里ガ浜」等を通過する観光路線です。私は2011年以降のデータしか持っていないので十分な判断はできませんが、2011年東日本大震災の津波以降、敬遠されていた海岸沿いへの人気が再び高まってきているのではないでしょうか。観光は言うまでもありませんが、この地域は住宅地としての需要も高く、これも乗降者数の増加に寄与していると考えられます。
- みなとみらい線・・・2004年に開業した「横浜」~「元町・中華街」を結ぶ路線で、横浜で東急東横線と乗り入れています。みなとみらい線の周辺は商業地域・住宅地域(高層マンション)・観光地としていずれも高く評価される地域です。最も注目するべきは商業地域としての「新高島」でしょう。横浜駅に隣接し日産自動車の本社等があり、現在も超高層オフィスビルの建設の進む地域です。乗降者数も5年間で133.5%と極めて高い伸び率を示しています。新高島以外でも「みなとみらい」「馬車道」「日本大通り」などいずれも1割以上の乗降者数の上昇がみられます。
- りんかい線・・・1996年に開業した「新木場」~「大崎」を結ぶ路線です。みなとみらい線と共に東京7番目の副都心である「東京臨海副都心」を通過する地下鉄です。「新木場」で京葉線・有楽町線、「天王洲アイル」で東京モノレール、「大井町」で東海道本線・東急大井町線、「大崎」で山手線に乗り換えが可能で、「大崎」では埼京線との乗り入れを行っています。東京臨海副都心はバブル崩壊に伴い、発展が遅れてきましたが、近年、オフィス、超高層マンション、観光地として需要を高めてきています。これに伴いりんかい線も5年間でほとんどの駅で1割を超える乗降者数の上昇が起きています。特に「天王洲アイル」は東京都港湾局により運河ルネサンス推進区域に指定され美しい水辺の景観を維持しながら、多数の超高層オフィスが連なっており、観光資源としても有効なことから124%もの上昇率となっています。
乗降者数 の増加率の高い駅(2018年、2013年対比)
駅の乗降者数の増加率については、上の図から興味深い構造が浮かびます。それは、南武線+武蔵野線(府中本町で交わる)の路線上及びその内側にある駅では乗降者数が増加傾向にありますが、外側では減少傾向にあります。つまり都心部に人口が集中し都心部の繁華性が増しているのに対し、南武線+武蔵野線の外側では人口減少などが生じていると思われます。外側で乗降者数が増加しているエリアは「横浜」、「厚木・海老名」「立川」、「大宮・浦和」、「千葉」など地方中核都市として機能しているエリアに限定されていました。
南武線+武蔵野線の線上と内側でも特に乗降者数が上昇している地域は「北千住・押上」「西船橋・船橋」「蒲田・羽田・川崎」「環七周辺(東京西部)」「臨海副都心」「調布・稲城」等が挙げられます。このうち「北千住・押上」「西船橋・船橋」の場合、北千住が常磐線と千代田線の乗り入れ、東武伊勢崎線と日比谷線の乗り入れ等、押上が京成線と浅草線の乗り入れ等西船橋が総武線、東葉高速鉄道、東西線の乗り入れ等による増加が大きい理由になっていると思われます。「蒲田・羽田・川崎」は羽田空港周辺の繁華性の向上、「環七周辺(東京西部)」「臨海副都心」「調布・稲城」は都心への人口の集中等が背景にあると思われます。
南武線+武蔵野線の外部の他の地域は「成田」は国際化に伴う空港関連、「藤沢・鎌倉」は観光・居住者の増加等が主たる理由になると思われます。