東京周辺の鉄道(8)りんかい線と京浜急行空港線


りんかい線と京急空港線

東京の臨海地域を走る鉄道は「東京モノレール」「京急空港線」「ゆりかもめ(東京臨海新交通臨海線)」「りんかい線」の4路線です。前の2路線が都心部と羽田空港を繋ぎ、後の2路線は東京臨海副都心を走ります。これら4路線の乗降者数はいずれも著しく増加しています。コロナ前までは飛行場の需要は増加の一途でしたし、東京都は東京臨海副都心の発展を大きく後押しをしてきたからです。このうち、特に乗降者数の伸び率の大きな「京急空港線」と「りんかい線」を取り上げます。

りんかい線

りんかい線は江東区新木場と品川区大崎を繋いでいます。新木場と大崎は大変離れた場所に思われますが、りんかい線は僅か12.2km、駅は8駅しかない短い路線です。(大崎から埼京線に入り、「川越」へ行く列車が中心ですが。)東京湾沿いでは江東区と品川は隣り合っています。1996年開業と新しく埋立地帯を走ります。「新木場ー東雲」は地上を走りますが、あとは地下鉄となります。

そして東雲、国際展示場(ビックサイト)、東京テレポート(お台場)、天王洲アイル、品川シーサイドと続く駅はお洒落なイメージですが、用途地域はほとんどが準工業地域を走る路線です。「工業」と入ると工場が建ち並ぶ様子を想像する人も多いと思いますが、この地域はむしろ物流基地となっています。また準工業地域は工業専用地域と異なり多様な用途が認められているため、超高層マンションや超高層事務所ビルなどにも用いられています。またお台場などは商業施設やホテルなど繁華性の高い建物が建ち並びます。そして東京のイメージアップのため、海上から美しく見えるように景観計画が定められ、特に天王洲アイルなどは景観を重視した独自の地区計画を定め、よりお洒落感が演出されています。このように東京臨海副都心は物流基地であり、超高層のオフィスビルやマンション、商業施設が混在する地域であり、お洒落であるという独特な地域を形成しています。

京急空港線

京急空港線は京急蒲田と羽田空港を繋ぐ僅か6.5kmの路線です。京急蒲田から京急本線に入り品川~泉岳寺まで行き、更に都営浅草線に接続します。都営浅草線は押上(スカイツリー前)まで行き、京成線に接続し成田空港まで行きます。余談ですが、羽田空港にも成田空港にも繋がる都営浅草線は地下鉄の中でも乗降者数が最も伸びている地下鉄の一つとなります。

京急空港線は1902年(明治35年)開業と非常に古くからある路線で、以前は「穴守線」と呼ばれていました。羽田空港のために開業したのではなく、羽田空港ができたため延伸した路線です。羽田空港が「東京国際空港再拡張事業」により拡大が計画され、1998年に京急空港線は「羽田空港駅(当時)」まで延伸されました。後で詳細に述べますが、穴守稲荷を中心とした繁華街だった地域へ路線を引いたのが京急航空戦の始まりで、その後羽田空港が完成し空港の発展に伴いその役割を変えてきた路線です。

りんかい線 駅 所在 2013年乗降者数 2018年乗降者数 伸び率
R 01 新木場 東京都江東区新木場 60200 67800 112.6%
R 02 東雲 東京都江東区東雲 12700 14400 113.4%
R 03 国際展示場 東京都江東区有明 64600 67500 104.5%
R 04 東京テレポート 東京都江東区青海 59300 66200 111.6%
R 05 天王洲アイル 東京都品川区東品川 33400 41300 123.7%
R 06 品川シーサイド 東京都品川区東品川 41600 47000 113.0%
R 07 大井町 東京都品川区大井 75800 88600 116.9%
R 08 大崎 東京都品川区大崎
京急空港線 駅 所在 2013年乗降者数 2018年乗降者数 伸び率
KK11 京急蒲田 東京都大田区蒲田
KK12 糀谷 東京都大田区西糀谷 23512 27990 119.0%
KK13 大鳥居 東京都大田区西糀谷 27897 30345 108.8%
KK14 穴守稲荷 東京都大田区羽田 14669 18878 128.7%
KK15 天空橋 東京都大田区羽田空港 19474 21293 109.3%
KK16 羽田空港第3ターミナル 東京都大田区羽田空港 14283 28415 198.9%
KK17 羽田空港第1・第2ターミナル 東京都大田区羽田空港 78171 93830 120.0%

りんかい線の駅

新木場

新木場は木場が移転してきた場所で、新木場の湾内は第二貯木場となっています。木材が中心となって工場や物流が発展してきた街です。新木場駅から東雲駅までは「新木場⇒辰巳⇒辰巳運河⇒東雲」となります。そして新木場~豊洲運河は物流会社や倉庫が建ち並ぶ地域となっています。この辺りだけを見るなら、「工業地域」という雰囲気が十分にあります。

東雲

辰巳運河と東雲の超高層マンション

 

豊洲運河沿いに内陸側を見ると、左岸(東雲側)に超高層マンション群を見ることができます。豊洲、東雲、辰巳といった地域は隅田川河口付近の運河に沿って東京を代表する超高層マンションが建ち並んだ地域となります。超高層マンション群は、武蔵小杉(神奈川県)が多摩川沿いの工業地域、川口(埼玉県)が荒川沿いの工業地域など河川や運河沿いの工業地域に多く見られます。

国際展示場~東京テレポート

国際展示場とは「東京ビックサイト(東京国際展示場)」です。1996年に晴海国際見本市を引き継ぐ形で作られた日本最大のコンベンションセンターです。ゆりかもめ「有明」駅に近接しています。

東京テレポートは「お台場」の最寄り駅です。フジテレビのほか、ダイバーシティ東京やデックス東京ビーチなどの商業施設、ヒルトン東京お台場やグランドニッコー東京台場等のホテル等、りんかい線沿線でも商業的に最も発展した地域となっています。ゆりかもめ「台場」「お台場海浜公園」「青海」の中心辺りにあります。

天王洲アイル~品川シーサイド

天王洲アイル周辺の運河

 

東京テレポート~天王洲アイルの間は東京湾や京浜運河があり市街地としての連続性はありません。東京モノレールと交差する駅です。

天王洲アイルは元々は物流倉庫街でしたが、地権者による天王洲総合開発協議会が発足、1986年に東品川二丁目(天王洲アイル)の開発マスタープランが策定され、これに基づき現在のオフィスビル群が完成しました。天王洲アイルは品川区景観計画では「景観まちづくり気運の高い地区」として、重点地区の指定を目指す地区として位置づけられている地域です。また天王洲運河の対面(北方向)、京浜運河沿いには住友不動産による高層マンション「ワールドシティタワーズ」が2007年に竣工しましたが、このマンションは2090戸もあり日本最大となっています。このように天王洲アイルは高層のオフィス、商業施設、マンションが整った景観の美しい地域となっています。なお、現在でも寺田倉庫の本社は天王洲アイルにあり、物流倉庫街だったころの面影となっています。

大井町~大崎、JR埼京線へ

りんかい線は大井町を経て大崎駅でJR埼京線に接続、渋谷・新宿・池袋・赤羽を経て、埼玉県に入り大宮から川越線となり、川越まで行きます。

京急空港線の駅

京急蒲田

京急空港線は京急蒲田で京急本線と分離します。京急蒲田はJR蒲田駅から約700m東方に位置し、第一京浜(国道15号)に隣接しています。JR蒲田駅からは徒歩で10分かからないくらいですが、繁華性はJR蒲田駅にやや劣ります。

糀谷~大鳥居

糀谷近辺の高架から

 

京急蒲田から「糀谷」へは高架で接続されます。糀谷の周辺はまだ蒲田の繁華性を引き継いでいますが、高架を走っていると糀谷辺りは低層住宅街であるのが判ります。

糀谷を過ぎると地下に潜り「大鳥居駅」は地下駅です。この大鳥居駅は環状八号と産業道路の交差点付近にありますが、現在、穴守稲荷の鳥居はありません。また、東急多摩川線が延伸して大鳥居駅で京急空港線に乗り入れるという計画が国土交通省の都市鉄道調査や大田区によって提案されているようです。

穴守稲荷~天空橋

穴守稲荷駅

 

京急空港線は従来は穴守線と呼ばれ、「穴守稲荷」への参拝や周辺の繁華街や海水浴のための利用が多かった路線です。

羽田空港は1931年(昭和6年)開業していますが、その前の羽田は賑わいのある繁華街でした。現在の羽田空港は鈴木新田という埋め立て地でしばしば堤防が決壊したため、「穴守稲荷」(現在の空港内)が建立されました。穴守とは堤防の穴から守る、という意味です。そして参宮客輸送のためにできたのが穴守線、現在の空港線です。羽田一帯(穴守稲荷周辺)は穴守線の開業により海水浴や球場等で賑わいのある街となりました。しかし戦後(昭和28年)、米軍により羽田空港の拡張のため穴守稲荷は空港内から現在地へと移転させられました。現在は羽田空港や環状八号線など、大規模建築物が建ち並ぶ現代的な地域としての趣がありますが、穴守稲荷駅周辺は古くからの羽田を彷彿とさせる情景が残されています。京急空港線は古くからの羽田の趣に、現在の羽田空港としての趣が覆いかぶさった地域を走る路線となっています。

「天空橋」の周辺にも近代的な建物が建ち、開発途上にありますが、傍を流れる海老取川沿いには、従来空港内にあった大鳥居が移設されています。また東京モノレールと交差する駅となっています。

羽田第3ターミナル~羽田第1・第2ターミナル

羽田空港

国内線

閑散とした国際線

「羽田第3ターミナル」は国際線、「羽田第1・第2ターミナル」は国内線となっています。

羽田空港(東京国際空港)は1,516ha(成田空港1,137ha)、2018年乗降客数約234千人(成田空港約113千人)で日本最大の空港となっています。1984年から2007年にかけて「東京国際空港再拡張事業」が行われ、2010年には4本目の滑走路であるD滑走路が供用開始となっています。羽田の滑走路はA(3,000m)B(2,500m)C(3,360m)D(2,500m)の4本です。因みに成田の滑走路は(A(4,000m)B(2,500m、3,500mへ延伸予定)でC(3500m)を新設予定となっています。このような羽田空港の発展に伴い、京急空港線の乗降者数は伸びてきました。(現在、コロナの影響で空港内は寂しい状況です。国内線は勢いを取り戻しつつありますが、国際線ターミナルは閑散としていました。)

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