良い不動産とは「良い土地」+「良い建物」です。そして土地と建物の比較において、「土地>建物 (土地は建物より重要)」と考えてください。もちろん程度の問題はありますが、建物の問題には対策が立てられるのに対して、土地の問題は対策が困難な場合が多いと思われます。(最悪、建物は建替えればよい。) そこで、まず① 良い土地 と② 良い建物の特徴を見てゆきましょう。ここでは、居住用に絞って考えます。

また、投資用不動産の場合は、「賃貸経営」の良否も考える必要があります。

「良い土地」について

  1. 土地の良し悪しを考える前提として、① 地域(最寄り駅の一帯の地域)を考えた後に、② 個別の不動産(土地)を考えましょう。何故なら、地域の変化に伴い不動産の価値は大きく変動するからです。例えば将来人口が増えればその地域は発展の見込みがありますし、人口が減っているのであればその地域は衰退する可能性があります。衰退しそうな地域に不動産投資を行えば、今は良くても将来収益は上がらず、不動産価格は下落する可能性が強いといえます。従って、先にどの地域に投資するかを考えてから、個別の不動産(土地)を探すという手順になります。なお、地域については複数の地域を先に探しておきましょう。例えば、「高円寺、千歳烏山、経堂のいずれかの周辺で探そう」といったようにです。そうすれば、案件も複数の案件を探せるようになります。
  2. 地域については、①街並みが整のった地域、②マンションや戸建て住宅が多く工場や高圧電線等嫌悪施設のない地域、③利便性の高い商業地域の近辺、④津波・河川の氾濫・土砂災害などの想定されていない安全な地域などに注意しましょう
    • マンションやアパートなどの居住目的の不動産については「住んで快適」と「利便性が高い」という2つの事項が大切です。ファミリー向けか単身者向けかによって、2つのウェイトは変わります。ファミリー向けの場合は快適性がより重視され、単身者向けの場合は利便性が重視される傾向にあります。しかし注意すべきは投資用不動産では単身者向けの需要が強く、ファミリー用でも利便性が強く考慮されるということです。ファミリー用で居住性が良ければ不便な所でもよいというなら自宅を購入するという選択肢を採用しがちとなるからです。
    • ④の自然に関する事柄はついつい忘れがちですが重要な要素です。自然災害は命に影響を与え、災害にあった場合は2度とその場所を利用できなくなることもあります。市役所や区役所でハザードマップを入手するようにしましょう。なお、道路が細く曲がりくねった地域では、震災で火災が発生すると逃げ損ねて命を落とすリスクがあります。
  3. 個別の不動産(土地)については、①駅距離が7分(560m)以内にある不動産、②前面道路が幅員4m以上で車通りの少ないの不動産などに注意しましょう。
    • まず駅距離から。賃貸サイトを探すとき、最初に見るのが駅距離と戸数・間取りでしょう。例えば「駅から10分で1LDKが8戸 」等です。そして駅距離は「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」で80mで1分とされています。駅に近ければ価格は上昇し、遠ければ下がります。さて、この駅距離で賃貸マンションやアパートに向いた距離はどの程度まででしょうか?私は駅から7分以内という基準で考えています。実際10分程度までは空室率も低いとは思いますが、今後の人口減少に備えると7分程度でなければ私は不安を感じます。
    • 道路幅員は4m未満(札幌は6m未満)だと建築基準法42条2項道路といわれ、建物建築時にセットバックすることが多いです。従って4m以上は必ずほしいところです。
    • 道路と土地の「高低」も重要です。住宅地の場合、土地が道路より高ければ日照や通風が良くプライバシー保護の観点からも良いと評価されることが多くあります。ただし例えば3mの擁壁がある等、あまりに高い土地は危険性や不便などの判断から低く判定されます。道路より低い土地についてはデメリットしかなく、まず確実に評価は低くなります。水が下に流れ、日照は悪くなります。
    • 道路との関係で建物を建築するためには道路と土地が2m以上接していることが建築基準法上必要です。「旗竿地」と呼ばれる土地はご存じでしょうか?入口が2m~3m程度しかない通路状になっていて、その奥に建物が建っている土地のことです。特に中古でマンションやアパートを考えている場合、注意が必要です。何故なら条例でこのような旗竿地にアパートやマンションを建築することが難しくなっているからです。つまり古くなっても建替えられない、売却するにも投資用不動産として売れない、など将来問題を抱える恐れがあるからです。
    • 土地の面積については大きい方が小さいものより利用効率が期待できるので賃貸マンション等には向いています。自用の住宅の場合は予算があるので小さい土地の方が土地価格の単価は上がりますが、事業用の場合は土地の規模にあった事業者規模が変わるため、大きな土地の方が土地価格の単価が上がる場合が多くあります。土地の面積が小さいと容積率により土地の利用効率が変わり、貸室の戸数などにも影響を与えます。
  4. 将来性の観点から土地(特に地域)を判断することは重要ですが、難しくもあります。「あそこにはスーパーができるらしいよ」などと実しやかな噂話が囁かれることがありますが、実際にはわかりません。私の物件の傍にも大型スーパーができると話題になり、実際にそのスーパーのホームページの予定にも載っていましたが、中断になってしまいました。将来についての噂話で大きな投資判断はやめましょう。私は将来の発展については、人口の変化に注目しています。これも必ずしも当てになるものではありませんが、マクロ的な統計を背景としているため、スーパーができる等の当たりはずれのある予測より手堅いと考えています。(ただし鑑定評価で価格を求める際には利用できません。)
  5. 特別な注意点…土地に関する特別な注意点としては土壌汚染、地下埋設物、埋蔵文化財があります。不動産投資をする際は、重要事項として不動産業者に必ず確認しましょう。特にクリーニング店やガソリンスタンド等よくある施設についても土壌汚染や地下埋設物は生じますし、埋蔵文化財も一般の人が想像する以上によくあるものです。これらにかかわると、建て替え時に土壌の浄化や地下埋設物の除去、埋蔵文化財の場合は工事期間や設計にまで影響を与え、大きな損失につながる恐れがあります。

「良い建物」について

「良い建物」については、「事業経営と不動産経営は相性抜群!」で①新しめの建物(10年程度目安)、②間取りや設備が時代にあって汎用性がある建物、③法律上の問題のない建物を上げていますので、順次説明します。

  1. 新しめの建物については、①ライフサイクル、②耐震性、③アスベスト・PBCの使用の有無、④間取り・設備の観点から比較的新しいものを選ぶ必要があります。
    • ライフサイクルの観点から、建物は木造で約30年程度、鉄筋コンクリート造でも約50年で躯体の耐用年数を見ることが多いです。従って、建物が古くなった不動産を買うと、早い時期に建物を立て直すため大きなコストがかかります。また、修繕費についても新築の頃は低い水準にあるものが、老朽化するに従い高い水準となります。これは費用負担が大きいことを意味します。通常、投資物件で表示される利回りは表面利回り(コストを考慮していない利回り)ですから、古い建物の場合、実質利回りはかなり低いものとなります。
    • 耐震性については、1981年6月以降、新耐震基準で建物は設計されるようになりました。これ以前の建物は旧耐震基準ですので地震に弱い場合もあり避けるようにしましょう。
    • アスベストは発がん性のある物質で、①鉄骨の耐火被覆に用いられた「吹付アスベスト(1989年頃まで製造)」と②建材として用いられた「アスベスト含有材(2004年頃まで製造)」とがあります。両方問題ですが、特に「吹付アスベスト」の発がん性は強く、建物取壊し時に完全密封の上作業をすることから取壊し費用が驚くほど高額になります。従って古めの鉄骨造建物に投資する場合、建築年次と吹付アスベストの使用は十分確認しましょう。
    • PCBは1972年までに製造された変圧器・コンデンサーの絶縁油に使用されています。管理が法律で取り決められていますが、ここまで古い建物はさすがにやめましょう。
    • 間取りと設備は時代によって大きく変化するものです。現在、畳の部屋やトイレバス一体型などの新築では少ないでしょう。アパートやマンションの場合も畳のある部屋やトイレバス一体型が賃借人より敬遠される等、貸室の稼働状況に影響を与えます。
  2. 汎用性がある建物
    • 汎用性に欠ける建物は賃貸しにくいことがあります。商業用の場合に多いのですが、建物が当初、賃貸を想定せず自社利用のために建築されたものを、事業の撤退等に伴って貸し出している場合があります。例えば1階から3階まで一つの店舗として貸し出すしかないような場合には借り手も少なく収益性は低くなりがちです。マンションやアパートなどでも一部をオーナー用として建築している場合もあり、この場合、オーナー用部分の賃借人が探しにくかったり賃料水準が低くなったりする恐れがあります。
    • 汎用性を考えるとき、戸数も重要です。戸数は最低でも6戸は欲しいです。少なすぎると対協が複数出た場合、経営が安定しませんし、土地の利用効率が低いとも思われます。
  3. 法律上の問題のない建物
    • 建物で現行の法律に合致しない場合は2通りあります。①違法建築物と②既存不適格建物です。
    • 違法建築物は建築時に既に違法、または建築確認後に違法となる増改築等を行った建物です。例えば容積率100%の規制の土地に、100%の建物を建て建築確認を取った後に110%に悪意で改造してしまった場合等があります。この場合、是正措置を受ける恐れがあり高額なコストが必要となる場合があります。
    • 既存不適格建物とは、建築時には合法であったが、その後法改正等により現在の方基準を満たしていない建物をいいます。例えば建築当時容積率が150%で150%の建物を建てたのち、改正により容積率が100%に改められた場合をいいます。この場合、是正措置は不要であり土地が現状の法規制よりも効率よく利用されているため、不動産価格が高く評価されることがあります。ただし建て替えのときは現行の法令に則るため、この例であれば容積率100%の建物を建てなければなりません。

賃貸経営 ~賃料収入、費用、将来性、売却可能性~

不動産が良ければ、賃貸経営は順調にいくの原則です。しかしマンションやアパートへの投資においては、一般的には既に賃貸がされているので、現状の賃貸経営が順調に行われているかも確認した方が確実です。賃貸経営については①適正な賃料収入を得られている ②費用が賃料収入と比べて妥当な範囲にある ③将来の収益(収入ー費用)見通しが立つ ④いざという時容易に売却できるという4点が重要となります。それぞれについて考えてみましょう。

  1. 適正な賃料収入を得られているか? ここでのポイントは①満室経営ができるか(空室の問題)、②賃料水準、③賃料を支払ってもらえるか、等に注意しましょう。
    • これらの点については、レントロール(賃借人の氏名や月額賃料、敷金、礼金の明細書)と個別の契約書を用いて確認します。個別の賃貸借契約書はすべてチェックしなくても構いませんが、賃貸借契約書がないような場合は投資後の賃貸経営に不安がありますので好ましくありません。
    • 賃料の支払い状況の確認も念のため、行いましょう。現在、賃料については家賃保証という制度が浸透し不払いについては保証会社が保証しているケースが多くあります。この場合は安全性が高いでしょう。
  2. 費用は大きく分けて、①建物の日常の管理費(清掃、ちょっとの修繕)、 ②契約管理費(募集、契約の継続、賃料の回収)、③大規模修繕費等を考える必要があります。不動産業者には管理会社から異常値がないか確認しましょう。
    • 建物の日常の管理は清掃費やちょっとした修繕費が中心となります。建物が大きい場合には警備費やエレベーターの保守費なども発生します。4階以上でエレベーターがあればよいと思われますが、エレベーター保守費は高額なため、エレベーターなしの方が良い場合もあります。
    • 契約管理費はマンションやアパートの場合、エイブルやアパマンショップに支払われる月々の費用です。賃料の5%程度と募集や更新のときの費用が中心となります。
    • 注意する必要があるのは、リーシング契約(業者が一括して借り上げエンドの賃借人に転貸している契約)です。リーシング契約の場合、収益が安定するというのが売りですが、空室率が高い等の場合には減額交渉をしてくることも多いようです。実際の空室率も把握し今後とも現在の賃料が維持されるのかチェックしましょう。
    • 大規模修繕(外壁塗装や屋上の防水加工等)は通常、築後12年~15年で実施されます。通常、小さめのアパートでも200万円以上はかかります。築年が10年を超えていて大規模修繕が実施されていない場合、投資直後に大きな費用が発生する可能性があります。
  3. 将来の収益見通し
    • マンションやアパートの場合、築年数が増すに従って賃料水準は低減する傾向にあります。上昇することはあまりありません。また費用は日常の修繕の発生頻度と単価が増加することにより上昇してゆきます。従って、収益見通しは下がってゆくことが原則となりますのでこの点には留意してください。
    • 周辺の競合不動産と比較して、賃料水準が高ければ賃料は下落しやすく、安ければ下落幅は小さいと思われます。
  4. 売却可能性
    • 将来の売却可能性は経営者で事業資金が必要な場合や相続の場合、不動産の売却に迫られる可能性があります。
    • 立地が良く、質の良い建物であり、賃貸経営が順調であれば、売却は比較的容易になる傾向にあります。